東京地方裁判所 昭和25年(ワ)7941号 判決
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(事実と判斷)
A(被告)はBに約手を振出し、Bは裏書によりこれをC(原告)に讓渡したところ、右約手は満期に不渡となり、その後BはCに対して右手形金の一部の代物弁済として仙貨紙等を引渡した。BはCに右引渡をなすに当り、「取あえず右手形金の一部支拂とする」旨を明言したが、Cは右引渡を以て右手形金の弁済とすることに同意せず、又その価額については紙価の暴落のため買入価格とするか処分の価格とするかについて意見が分れ、協定が成立するに至らなかつた。従つて、BのCに対する右代物弁済はいかなる債権に充当せられたか、又その充当額は如何ということが問題になるが、これに対する裁判所の判断は次の通りである。
「(本件は)結局右代物弁済契約において、債権者の債権が特定せられず又弁済額の定のない場合であるが、原告(C)においてBの右申出(手形金の一部支拂とする旨の申出)を拒絶しても弁済充当の指定はなされたものと認むべきである。而して民法が弁済者に弁済充当の指定権を付与した趣旨に徴し、この指定によつて右代物弁済は本件手形金の弁済としての効力を有するものと解すべきであり、且つその額は別段の意思表示のない場合に準じ衡平の観念に照し、その引渡当時の右物品の時価相当額と解するのが信義に適し正当と考える。蓋し本件の場合のように代物弁済契約において充当せらるべき債権と充当額とが定まつていないというのでは、その契約の成立自体甚だ曖昧で、寧ろ不成立と解し得られないではない。然しながら債権者である原告においても、代物弁済を有効のものとして引渡を受けた物品を、その当時既に処分して換金取得したことは弁論の趣旨に徴し明白であるから、代物弁済契約が不成立と断ずるのは当事者双方の意思に反し事態を徒に紛糾させ不都合の結果を招くであろう。」(括弧内筆者)